WBSの大項目・中項目・小項目をどのように設定すれば良いか分からない場合は、「料理」を使って練習しましょう。
カレー作りをプロジェクトと考えて、スケジュールを組み立ててみましょう。
最初から大きなプロジェクトに当てはめて考えると、考えることも多いのでWBSの使い方を学ぶことが難しくなります。まずは、カレー作りのような簡単なプロジェクトから考えるようにしましょう。
こんにちは!コンじゃぶろーです!
プロジェクト管理において、全体の目標を細分化し、それぞれの作業を明確にすることは極めて重要です。このプロセスを効率的に行うための強力なツールが、ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ(WBS)です。WBSは、大規模なプロジェクトを小さな作業単位に分割し、プロジェクトの全体像を把握しやすくすることで、チーム全体の理解を深め、管理を容易にします。
しかし、WBSの概念を初めて学ぶ人にとっては、その構造や作成方法が複雑に感じられるかもしれません。そこで、この記事では、より身近な例として「カレーの作り方」を用いて、WBSの作成プロセスを具体的に解説します。料理という日常的な活動を例にすることで、WBSの基本的な理解を深めることができるでしょう。
私も、WBSを使い始めた頃は、実際のプロジェクトを使いながら学んでいましたが、抜け漏れのないスケジュールがひけるようになるまで時間がかかっていました。
カレー作りを、シンプルでコンパクトなプロジェクトとして考えてWBSを構築すると、その全てが把握しやすく理解しやすくなります。
カレー作りの作業(タスク)を、どのようにWBSに落とし込むか?大項目から中項目、小項目、そして具体的なタスクまでの分解方法を学びましょう。これにより、WBSがどのようにプロジェクトの進行を支援し、管理を効果的に行うための道具となるのかを、明確に理解することができるでしょう。
プロジェクト管理の技術を磨くことは、日常生活の中でのさまざまなタスクにも応用可能です。この記事を読んで、スマートなタスク設計力を身につけて「仕事ができる」クリエイターになりましょう!
はじめに WBSとは何か?
ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ(WBS)とは、プロジェクトを成功に導くために不可欠なプロジェクト管理ツールです。WBSは、大規模かつ複雑なプロジェクトをより小さな、管理しやすい作業単位に分割する手法です。この分割により、プロジェクトチームは具体的な作業内容とそれに必要な時間やリソースを明確にすることができます。基本的に、WBSは目的の達成に必要な全ての作業を網羅的に図式化し、プロジェクトのスコープと配分される責任を明確にすることを目的としています。
↓WBSに関しては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
WBSの歴史と進化
WBSの概念は1950年代後半に米国の国防産業で初めて形式化されました。特に、ポラリスミサイルプロジェクト(冷戦時代にアメリカ合衆国が開発した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を製造するプロジェクトで、アメリカの核抑止力の重要な部分を形成していました。)での使用が知られています。この時、プロジェクトの複雑さと規模に対処するために、WBSが導入され、プロジェクトの管理と実行の効率を大幅に改善しました。以降、WBSはさまざまな産業やプロジェクトで採用され、プロジェクト管理の国際標準としての地位を確立しました。
アメリカ合衆国を大国へと押し上げて「大量生産」の裏に「WBS」を学び、あなたのクリエイティブの原動力として取り込みましょう。
プロジェクト管理におけるWBSの役割
プロジェクト管理におけるWBSの役割は多岐にわたります。まず、WBSはプロジェクトのスコープ(プロジェクトの範囲や目標)を視覚的に表現することで、プロジェクトチームが必要な作業を正確に理解し、共有する基盤を提供します。
各チームメンバーが自身の責任範囲を把握し、プロジェクトの目標達成に向けて効果的に協力することが可能となります。
また、WBSはコスト見積もり、スケジューリング、リソース割り当ての精度を高めるための重要なツールです。作業単位が明確に定義されていることで、それぞれのタスクに必要な時間やコストをより正確に計算でき、プロジェクト全体の予算管理や時間管理が容易になります。
さらに、WBSはリスク管理においても重要な役割を果たします。プロジェクトを構成する各タスクを詳細に把握することで、潜在的なリスクを早期に識別し、対策を計画することができるのです。これにより、プロジェクトの遅延や予算超過のリスクを最小限に抑え、成功確率を高めることが可能となります。
このように、WBSはプロジェクトの成功を支えるための強力なフレームワークを提供し、プロジェクトマネージャーが複雑なタスクを効果的に管理し、チームを指揮するための重要なツールとなっています。
WBS作成時のポイント
WBSを作成する際には、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、プロジェクトの全体目標を明確にし、それを達成するために必要な主要な成果物を特定することが基本です。WBSは「100%ルール」に従って作成されるべきで、これはプロジェクトの全作業と成果物がWBSに含まれることを保証するルールです(全てのタスクは、WBSに書かれているということです)。
また、WBSは階層的に構成されるため、各レベルのタスクが上位の成果物に直接寄与するかどうかを常に確認することが重要です。
明確な目標の設定
WBSの作成において最も重要な要素の一つが、明確な目標の設定です。プロジェクトの目標が不明確だと、適切なWBSの作成は困難になります。
プロジェクトの目標は、具体的、測定可能、達成可能、関連性があり、時間的に限定されたSMART基準に基づいて定義する必要があります。これにより、WBSを通じて各タスクがどのようにプロジェクトの最終目標に寄与するかを明確にすることができます。
SMART基準は、目標設定の際に効果的で実用的なガイドラインを提供するためのアプローチです。※SMARTは以下の各文字の頭文字から成る略語
- 具体的(Specific): 目標は明確で具体的である必要があります。何を達成したいのか、どのように達成するかがはっきりしているべきです。具体的な目標は、あいまいさを排除し、目標に向かって取り組むべき具体的な行動を定義します。
- 測定可能(Measurable): 進捗を測定できるように、目標は定量的、または定性的な評価基準を含むべきです。これにより、目標達成の程度を確認し、必要に応じて計画を調整できます。
- 達成可能(Achievable): 目標は実現可能でなければなりません。過度に野心的すぎると、モチベーションの低下を招く可能性があります。一方で、容易すぎる目標もまた、成長や改善を促しません。利用可能なリソースと能力に基づいて達成可能な目標を設定します。
- 関連性(Relevant): 目標は個人や組織の広範な目標や価値観と関連があるべきです。関連性のある目標は、より大きな目的や戦略的な方向性に寄与し、モチベーションの向上にもつながります。
- 時間的に限定された(Time-bound): 目標には明確な期限が設けられるべきです。期限があることで、目標に対する取り組みが具体的なスケジュールの中で行われ、時間管理が促進されます。
分解の精度と詳細のバランス
WBSを作成する際には、タスクをどの程度にまで細分化するかが重要な判断点となります。過度に細分化されたWBSは管理が煩雑になり、逆に不十分な分解はプロジェクトの見通しを損なう原因となります。適切なバランスを見つけるためには、タスクの管理可能性と監視の容易性を考慮する必要があります。一般的に、各タスクは独立して割り当て可能で、時間とコストを明確に見積もるべきです。
30分以下のタスクは、細分化しすぎで、3日以上のタスクは「曖昧」になっている事が多いです。細分化のレベルに関しては、プロジェクトによって変わる部分なので過去の実績を見ながら判断しましょう。
WBS作成時のこれらのポイントは、プロジェクトの効率的な管理と成功への道を平滑化するための鍵となります。プロジェクトの目標に対して明確な道筋を提供し、チームメンバー全員が同じ方向を向いて努力できるようにするために、これらの基本原則を念頭に置いてWBSを作成しましょう。
WBSの階層構造 大項目からタスクまで
ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ(WBS)は、プロジェクトを管理しやすくするために、大項目(Level 1)、中項目(Level 2)、小項目(Level 3)、そして具体的なタスク(Level 4以降)といった階層構造に分割されます。この階層的な分解によって、プロジェクトの各部分がどのように全体の目標に寄与しているのかを視覚的に理解しやすくなります。
ただ、この階層構造の認識が非常に難しく感じる部分かもしれません。全ては、スケジュールを作成する人の匙加減による部分が多いので、組織やチームで運用する場合は基準を設けると良いでしょう。安心してください。使用していると自然に階層の認識が共有されてきます。
実際、ゲームを作っている学生からは、大項目・中項目・小項目の区分けが難しいと言われることが多いです。ここでは、それぞれの項目の定義とその例を紹介しますので、感覚を掴んでください。
大項目の定義と例
大項目はプロジェクトの主要な成果物やフェーズを表します。これはプロジェクトの最高レベルの分類であり、プロジェクトの全体的な目標に直接関連する要素を含みます。
クライアントのようなプロジェクトの決裁権を持った人、あるいは納品物として用意すべき成果物を基準に設定するのが良いでしょう。受注開発の現場では、支払いが発生するマイルストーンとして設定されることが一般的です。
例えば、建設プロジェクトの場合、大項目には「基礎工事」「構造体工事」「仕上げ工事」といったカテゴリが含まれるかもしれません。
中項目の定義と例
各大項目の下には、さらに細分化された中項目が位置します。これらは大項目の成果物を実現するための具体的なセグメントや活動を指します。建設プロジェクトの「基礎工事」を例に取ると、中項目には「地盤調査」「型枠設置」「コンクリート打設」などがあります。
大項目を作成する為の部品として、項目を設定するのが良いでしょう。成果物として、明確に設定できるものになります。
小項目の定義と例
中項目をさらに細かく分割したものが小項目です。これは中項目内の具体的な活動やタスクに焦点を当てたもので、プロジェクト管理者が詳細な計画や監督を行う基本単位となります。「型枠設置」の小項目としては、「材料の購入」「型枠の組立」「型枠の解体」などが考えられます。
大項目や中項目に比べて、成果物が見づらくなるので、省略されることも多いです。複数の人のタスクを合わせて1つの成果物になるようなケースで、設定するようにしましょう。
タスク名の設定と例
最も詳細なレベルでは、小項目を構成する具体的なタスクが位置づけられます。タスクは個々の作業や活動であり、具体的な作業指示や期日が設定され、特定のリソースが割り当てられます。例として、「材料の購入」タスクでは、「見積もりの取得」「発注」「納品の確認」などが挙げられます。
この階層構造を通じて、プロジェクト管理者は各レベルで必要なリソースの割り当て、スケジューリング、および進捗の監視を行うことができ、プロジェクト全体の効率的な管理を実現します。
タスク名は、(クラウドの)スケジュール管理ツールで、タスクのタイトル名として使われることが一般的です。なので、長くなりすぎないようにしましょう。個人的には「文章」の形になっている場合は、細分化が足りていないと考えタスクを分割するのが良いでしょう。
実践編:カレーを作るプロセスをWBSで分解
WBSについて、大項目・中項目・小項目について、考えをインプットしてきました。概念を知ったなら、次にすべきはアウトプットのある実践です。
私がお勧めしているWBSの実践は「料理」です。自分の意思とは別に状況が変化していくという点において、プロジェクトと料理は非常に良く似ています。なので、料理をWBSに落とし込む練習をするとイメージしやすくなります。いきなりゲーム開発で使ったりすると、イメージできずに複雑になってしまいがちなので、イメージしやすい題材を選びましょう。
カレーを作るプロセスをWBSで分解することは、プロジェクト管理の技術を日常の課題に適用する一例として非常に有益です。ここでは、カレー作りをプロジェクトと捉え、そのプロセスを効果的に管理するためのWBSの作成方法を詳細に説明します。
カレー作りのプロセスを分析
まず、カレー作りのプロセスをWBSに落とし込む前に、まずはその全プロセスを理解し、主要な作業を特定する必要があります。一般的なカレー作りのステップは、材料の準備、調理、そして仕上げの3つの大項目に分けられます。それぞれのステップをさらに中項目、小項目に細分化し、具体的なタスクまで落とし込みます。
いきなりWBSを書き始めるんじゃなくて、頭の中で、どういう材料が必要なのかをイメージして、組み上げる順番をメモするなどして整理してみましょう。
具体的なWBSの作成例
WBSを日常の料理プロセスに適用することで、プロジェクト管理のスキルを磨くとともに、効率的な時間管理やリソースの使用が可能となります。WBSの作成と利用を通じて、計画の明確化、プロセスの視覚化、およびタスク管理の精度を高めることができます。この技術を他の多くの日常的な課題や業務プロジェクトに応用することで、より計画的でシステマティックなアプローチを身に付けることができます。習得した技術を活かして、日々の生活や仕事においても成果を出し続けることが重要です。
カレーのルーを作る際の、大項目・中項目・小項目・タスクを書いてみました。
- 大項目:材料の準備
- 中項目:材料の購入
- 小項目/タスク:肉と野菜の選定と購入
- 小項目/タスク:スパイスとその他必要材料の購入
- 中項目:材料の下準備
- 小項目/タスク:肉のカット
- 小項目/タスク:野菜の洗浄とカット
- 小項目/タスク:スパイスの計量
- 中項目:材料の購入
- 大項目:調理
- 中項目:炒める
- 小項目/タスク:オニオンの炒め
- 小項目/タスク:肉の炒め
- 中項目:煮込む
- 小項目/タスク:野菜と肉をスパイスとともに煮込む
- 小項目/タスク:味の調整
- 中項目:炒める
- 大項目:仕上げ
- 中項目:最終味の調整
- 小項目/タスク:塩加減の調整
- 小項目/タスク:スパイスの追加
- 中項目:盛り付け
- 小項目/タスク:カレーの盛り付け
- 小項目/タスク:添え物の準備
- 中項目:最終味の調整
実際には、それぞれの項目には「時間」と「開始日」「終了日」という数値データを明確に設定していくことになりますが、大項目・中項目・小項目について理解できたのではないかと思います。何を大項目にして、何を中項目にするか?なかなか難しい問題ではありますが、実際の開発に利用することでWBSになれていきましょう。
まとめ WBSを使いこなしていく為に
プロジェクト管理の効率を高めるための重要なツールとして、WBSについて深堀してきました。各項目の役割と細分化する基準について理解を深めることができたのではないかと思います。
WBSはプロジェクトの全体像を明確に捉え、各段階ごとの作業を体系的に理解することを可能にします。この記事では、カレー作りという具体的な例を通じて、WBSの作成方法とその利用の利点を探りました。
WBSを用いることで、プロジェクトの主要な成果物とそれを構成する各タスクが明確になり、リソースの割り当てや時間管理がより効果的に行えるようになります。また、プロジェクトの進捗状況を容易に把握し、必要に応じて迅速に調整を加えることが可能です。これにより、プロジェクト全体のリスクを低減し、成功確率を向上させることができます。
カレー作りを例に挙げたことで、WBSがどのように日常のタスクにも応用可能であるかを示しました。このような日常的なプロジェクトにWBSを適用することで、その方法論の理解を深め、より大規模で複雑なプロジェクトへの応用の準備が整います。
WBSはただのツールではなく、プロジェクトを成功に導くための強力なフレームワークです。これを活用することで、プロジェクトの目的と要求に応じた詳細な計画を立てることが可能になります。プロジェクト管理の技術を磨くためにも、様々なプロジェクトや日常のタスクにWBSを積極的に適用してみることをお勧めします。
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