ゲームのアイデアをどこから広げたら良いかわからない…。
アイデアの引き出しが空っぽで、何も思いつかない…。
そういった悩み多いですよね。今日は、ゲーム企画のとっかかりを見失っている人に向けて切り口をご紹介します。
こんにちは!コンじゃぶろーです!
ゲーム開発の流行を追いかけるのはとても大変です。なぜなら、ゲーム開発には3年とか5年とかかかってしまうからです。流行を追いかけているうちに時代が変わってしまいます。
私の主戦場はモバイルゲームで開発期間は3ヶ月から長くても半年でしたから、比較的「流行」にあててゲームを作ることはできました。しかし、それでも3ヶ月過ぎただけで旬が過ぎてしまうことも多かったです。なので、比較的これまでの歴史を振り返って流れを読むようなことをしてきました。
歴史は繰り返すものです。過去の歴史を学べば、必ず未来を予測するのに役立ちます。
最近、読んだ本が面白かったので紹介したいと思います。エイドリアン・セビルさんの「西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界」です。
16世紀から19世紀に、広くヨーロッパで遊ばれたすごろくですが、その根幹には賭博の要素で成り立っているんですけど、「すごろく」というテーマがいろんな切り口で改変され楽しまれてきた歴史があります。
その流れがとても面白かったので、今日はその内容について解説を入れつつ紹介したいと思います。詳細を知りたい方は、原作本を読んでみてください。
すごろくの歴史
双六は、歴史が古いゲームです。紀元前3500年前に登場した「セネト」そして、紀元前3000年前に登場した「バックギャモン」があります。バックギャモンは、奈良時代に「盤双六(ばんすごろく)」という形で入ってきました。この時からすでに面白くて、今やってもその戦略性の高さに驚かされたりします。
17世紀以降のボードゲームと、紀元前のゲームに想う
今回紹介する「西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界」ですが、時代は17世紀以降のヨーロッパで流行っていた「すごろく」の紹介です。個人的には、この本で紹介されていた「すごろく」よりも紀元前から遊ばれていた「セネト」や「バックギャモン」の方がゲーム性があって楽しいものです。
ルールが秀逸でパッケージのデザインもかっこいいので、(現在でも)お酒を飲みながら遊ぶと白熱するんですよね。なので、あんまり興味がなかったんですけど、たまたま手に取って読んでみるととても面白かったんです。
17世紀以降のボードゲームの発展
17世紀以降のボードゲームは「ガチョウのゲーム」から始まります。コマとサイコロとボードで構成された非常にシンプルなゲームです。
ガチョウのマスに止まるともう一回サイコロがふれるとか、死神マスに止まると1回休み。ゴールマスは丁度止まらないとオーバーした分後ろに進む等、非常にシンプルな構成になっています。基本的には、賭博要素が強く絡んだ状態で進化していくので大航海時代の酒場で遊ばれていたのではないかと思います。
私は、ガラケーのアイデアを考えていた時、毎日いろんなアイデアを切り口にして膨らませたりまとめたりしていました。その流れに割と似てるんですよね。勉強の要素を入れたり、広告宣伝の要素を入れたり、いろんな工夫によって派生した様子が、あの頃の僕のアイデアの膨らませ方に共通する部分もあったので、その部分も含めて紹介しようと思います。
西洋ヨーロッパすごろくの歴史。ゲームクリエイターがそこから学ぶ切り口
今回紹介する「西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界」では、さまざまな双六ゲームが紹介されています。写真と解説が入っているので、とてもわかりやすいです。ページ数も多いですが、1時間くらいで読むことができました。
歴史の流れを紐解きながら紹介されているので、同じ流れで「ゲーム企画」のとっかかりを解説したいと思います。書籍で紹介されている双六のルールは簡易的な説明に留めておきます。
西洋ボードゲームの元祖「ガチョウのゲーム」
ガチョウのゲームは、非常にシンプルなルールである為、様々な派生を産んだようです。まずはビジュアルの変化、そして「ガチョウ」を別の動物(猿やうさぎや亀など)に変える動物の変化があります。「西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界」では、多種多様な派生双六が紹介されていました。
ビジュアルの変化は、印刷技術の発展によって多色刷りであったり、活版印刷だったりして「デザインナー」の存在を感じさせるものです。ゲーム企画でも既存ゲームの中身は同じで見た目だけ変える(見せ方を変える)というやり方があります。
ガチョウを「猿」や「うさぎと亀」など、「キャラクター変更」を使って「ルール」を変更すれば別のゲームという印象を与えることも可能です。すごろくの派生を学ぶことで、自分のアイデアを派生させる切り口にできます。
ギャンブル色が強い「フクロウゲーム」
フクロウゲームは、コマを動かすものではなくて、サイコロを3つ振った時の出目が盤面に表示されていて、出た目によってもらえるコインが変わるルールになっています。
これは、サイコロゲームの「チンチロリン」に近いですよね。ここから学べる切り口は、双六という見た目で、違うものに表現するという点と、「ギャンブル」要素を強くするということでしょう。ただ、ギャンブル要素が強すぎると、ルールがクソゲーでも楽しめてしまうので、割と劇薬なんですよね。
だから、個人的には、一通りルールを考えてからギャンブル要素を最後に追加するのが良いのではないかと思います。このフクロウゲームも「7ゲーム」や「道化師ゲーム」「将校ゲーム」「行商人ゲーム」等の派生ゲームを生み出しています。
根幹を派生させた上で、ビジュアルやキャラクター変更による派生をするテクニックは、ゲーム企画でもかなり有効な手ですね。
教育的ゲームへと派生
エデュケーション要素というか「教育要素」を追加するというのも非常に効果的なテクニックですね。シンプルなゲームに「算数」や「理科」「歴史」などの要素を組み込むことで「遊んで学べる」という価値を生み出すことができます。
私もKOEIさんの大航海時代で世界の地理を覚えたので、遊びながら学ぶというのも非常に面白いですよね。今回紹介している書籍「西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界」でも、「フランス王国の地理ゲーム」や「ヨーロッパ周遊ウォーカーの新地理ゲーム」「フランス君主の新しい変年史ゲーム」など、内容はシンプルなガチョウゲームで「学び」の要素を加えて新しい価値を生み出している歴史が紹介されています。
歴史や天文学、道徳や宗教、植物の育て方など、遊ぶ人に合わせてさまざまな双六が紹介されています。
世界を旅するボードゲーム。擬似旅行体験の始まり
19世紀になると、双六は擬似旅行という役割を担い始めます。
今で言えば、バーチャルリアリティーやイマーシブ要素が人気があるので、企画するゲームにそういう要素を盛り込むのも良い手ではないかと思います。
世の中は汽車や汽船を使った世界旅行がブームになっていて、庶民の憧れの的だったんでしょう。日本でも江戸時代は、旅行記的なものが良く売れていたようです。ある程度民衆の生活が豊になると「旅行」というニーズが高まってくるものなのでしょう。
書籍「西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界」の中では、「ライン鉄道のゲーム」や「ヨーロッパ旅行のゲーム」「オリエント、あるいはインド旅行」「80日間世界一周」といったすごろくが紹介されています。中には天体を旅する宇宙旅行的な「遠日点」は興味深いです。
戦闘・包囲戦・一騎打ちなど、戦争の要素
19世紀や20世紀は、戦争の時代です。なので、人々が遊ぶ双六に「戦争」の要素が入ってくるのは仕方がないことかなと思います。
ここでゲーム企画の参考になるのは「ロールプレイング」です。ゲームのルール的には、ガチョウゲームと同じルールのものが多いですが、プレイヤーが擬似的になんらかの「役割」を背負ってプレイするだけでゲームのノリが変わるんですよね。
なので、ゲームの構造的には古い仕組みでも「プレイヤーのノリ」を変えてみるという切り口はありだと思います。
書籍「西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界」の中では、「帝国海軍の新ゲーム」や「フランス軍の新ゲーム」「騎士のゲーム」などが紹介されています。
階級が上がる要素がある「少年水夫から提督に」や、防壁から敵を追い出す「アサルト(襲撃)」は、ゲームの仕組み的に「ガチョウゲーム」とは全く違う要素になっていてとても面白いルールになっていました。
競馬や自転車などスポーツ要素の導入
役割の次は、シチュエーションです。これまでも状況が変わる派生はありましたが、シチュエーションがゲームのルールに落とし込まれている双六ゲームが増えてきます。
競馬ゲームでは、一周ぐるりと回るマスになっていて、馬を操作するルールになっています。実際に競馬をしているような感覚は、これまでにないエキサイティングなゲームになっています。
見た目だけではなく、モチーフをルールに落とし込むという切り口は非常に高度なテクニックですよね。
風刺と抗議への利用。言いたい事の代弁者としての役割。
ゲームとして、工夫されて発展を繰り返すとやがて文化的な作品が登場してきます。
国や政治体制に対する風刺や抗議の意味で「すごろく」を作るというものです。ゲームは没入感があるので、思想をプレイヤーに伝えやすい媒体です。なので、世論操作に利用されていきました。小説や絵画、音楽など、文化的に発展するとこういう使われ方をするのは世の常なのかなと思います。
ゲーム業界でも、プレイヤーへ強烈なメッセージを伝えるゲームが登場してきてますよね。2人専用のゲームで夫婦の絆を考えるきっかけを作る「It Takes Two」。戦争を民間人目線で見せるサバイバルゲーム「This War of Mine: Final Cut」は、大学の研究テーマにもなっているようです。
メッセージを伝えるという点も、これからの「ゲーム企画」に必要な要素かもしれませんね。
広告・宣伝として活用された歴史
面白いゲームがたくさん登場すると、「無料化」の流れが起きます。これはゲーム業界も同様ですね。双六の世界でも、スポンサーの商品を販売する為の「広告・宣伝」目的の双六が登場し始めます。
ゲームは、全てを自分ごとと捉える遊びで「自主性」が高い没入型のエンタメなので、テレビやラジオで垂れ流す広告よりも効果的だったりするんですよね。
何かの商品を買う時というのは、何か行動した時だったりします。ゲームの中で擬似的に商品を購入する体験をすることで「購買意欲」につながったりします。ゲームで遊ぶ人は無料で遊ぶことができて、ゲームクリエイターは開発費をスポンサーから捻出できる。スポンサーは自社の商品を売ることができる。三方よしの形になっていますね。
これからゲームを作りたいというゲームクリエイターは、広告・宣伝の勉強も欠かさないようにしましょう。
まとめ 双六の歴史から学び、ゲーム企画に活かす
いかがでしたでしょうか?今日は双六の歴史を振り返りつつ、ゲーム企画のとっかかりについて解説してきました。
双六は、非常に歴史のあるエンタメです。テレビゲームの歴史も、同じような歴史を辿っているように思いませんでしたか?
さまざまなクリエイターが知恵を絞って開発されてきたんだなと気づけて、この本と出会えてよかったなと思いました。私自身も、10年ほど企画に相当打ち込んだ時期がありました。なので、古代のゲームクリエイターに共感できたんですよね。
私の場合は、わらにもすがる思いでいろんな切り口を探してきました。あの当時に、この本に出会っていたらもっと良いアイデアが出せたかなと思います。そういう思いもあって、若い企画者世代に向けて記事にまとめてみました。参考にしていただけると幸いです。
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